Interview
蓮沼執太 ✕ 佐々木敦
Shuta Hasunuma ✕ Atsushi Sasaki
“『アントロポセン』では、アルバム全体が、世界とコミュニケーションを取ることとすごく似ている”ーー蓮沼執太がアルバムのタイトルに『アントロポセン』を選んだのは、どういう過程があってのことだったのか?「蓮沼フィルのメンバーと一緒に活動をすることは、自分にとって素晴らしい出来事だった」と語るその理由とは?
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Session 3
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蓮沼執太(以下、蓮沼):
『アントロポセン』ではもう、勝手気ままに自由にアルバムを作りたくて。
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佐々木敦(以下、佐々木):
うん。
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蓮沼:
フィルとはいえ、歌の部分も多くあるので。歌のある音楽の作り方ってあるじゃないですか。
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佐々木:
そういう、一応の決まりというか、コンベンションみたいなものね。
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蓮沼:
はい。そういう制作のルールや文法に乗っかるのではなく、もちろんそれを壊して新しさを作るのでもなく。さらに反芸術的なアプローチを取るわけでもなくて。
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佐々木:
うん。
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蓮沼:
このアルバム全体が、世界とコミュニケーションを取るみたいなこととすごく似ていると思っています。何て言ったらいいかな…タイトルもタイトルなのですが、今年の春にやっていた資生堂ギャラリーでの展覧会とも地続きなのですが。
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佐々木:
うんうん。
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蓮沼:
資生堂ギャラリーの展示では、過去から現在へと繋がる自分自身を見直す、ということが必要なテーマでした。
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佐々木:
うんうんうん。
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蓮沼:
蓮沼フィルの場合も、過去の蓮沼フィルを見つめ直し、現在を考えていくための指標にしています。
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佐々木:
うん。たった今タイトルの話も出たので、タイトルの話もやっぱりこう……必ず伺いたいと思っていました。『アントロポセン』。日本語では「人新世」だよね。
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蓮沼:
はい、そうですね。
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佐々木:
なぜ『アントロポセン』というタイトルつけたのかということは、このステイトメントのテキストに書いてあって(https://www.hasunumaphil.com/statement/)、「ああ、そういうことなのか」と思ったんだけど、前作の『時が奏でる』というタイトルも、何かすごく意味深いものであったと思うんだけども、『アントロポセン』は、また蓮沼くんらしいなって思ったんだよね。
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蓮沼:
そうですか!?
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佐々木:
一番最初に思ったのは、あなたさ、こういう語感好きじゃん。何かこう……、こういう『CC OO(シーシーウー)』(http://www.shutahasunuma.com/release/239/)とかなんとか(笑)。
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蓮沼:
ははは(笑)。
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佐々木:
なんかこう、なんていうの……。
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蓮沼:
音の響きだったり、発音された言葉のイメージみたいな。
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佐々木:
そう。だから『アントロポセン』も、もちろん意味からきている部分も、もちろんいっぱいあるんだろうけど、なんか『アントロポセン』って言いたいんだろうなって(笑)。
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蓮沼:
ははは(笑)。
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佐々木:
そういうのあるのかなって(笑)。俺はね、『アントロポセン』って、かわいい感じがするな、みたいな。全然意味としては重いんだけど。
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蓮沼:
言葉の響きと意味がちょっと分断されている感じがしますよね。
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佐々木:
そうそう、言葉の響きとして。「ポ」が入ってるみたいなところ。タイトルは、最後に決めたの? いつ決めたの?
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蓮沼:
最後の最後ですね。
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佐々木:
録音の後に。
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蓮沼:
制作中、ずっとタイトルを考えていました。このアルバムは僕にとって、フィルにとって何なんだろう? という。
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佐々木:
「人新世」は、本当に注目されている概念でもあって。雑誌の『現代思想』界隈でもすごく言われている言葉ではあると思うんだけど。そこで、僕なんかやっぱりこれは(プレスリリースの文章を読んでも)、蓮沼くんらしいと思った。例えば、アントロポセンという言葉を使う、いわゆる思想系の言説というのは、すごくざっくり言ってしまうと、実は大きく2つの方向に別れていて、それはすごくわかりやすく言うと人間主義か反人間主義か、なんだよね。
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蓮沼:
はい。
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佐々木:
人間主義というのは、単純に考えると、それはエコロジーということだよね。エコロジー的な考え方が、アントロポセンという言葉とすごく結びついているということ。もう一つは、元々持っていた問題意識を強くした時の、人間の廃棄あるいは絶滅みたいなもの。人間というものが、人間の誕生というものが、そもそも地球環境の中でどういう意味を持っていたかというと、破壊的な意味しか持っていなかった。ということで、そちらの方向は過激なんだけど、そちらの方向の考え方というのも、結構いるわけだよね。
つまりそもそも、人間や人類というものについて考えるときに(もちろん今の人間主義か反人間主義かということがそもそもあるし、2つのベクトルだと思うけども)、それがやっぱり地球環境の悪化だの、世界の状況の悪化だのなんだのみたいな、要は、資本主義の問題だというのも出て来た結果、何かすごく際立って、2通りになっているなって思うわけ。 -
蓮沼:
主義の話ですね。
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佐々木:
そうそうそう。例えば「いや、人間なんて、いなくてもいいっす」、みたいなところのコンピューターミュージックみたいなことを、『アントロポセン』っていうアルバムタイトルでやる人だっているかもしれないわけじゃない?
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蓮沼:
人工知能やアンドロイドが作るコンピュータ音楽ですかね。
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佐々木:
でも、蓮沼くんはむしろアントロポセンという言葉と、それこそまさにフィルみたいな十数人の人たちと一緒に、別にしょっちゅう一緒にいるわけでもない人と、何かをするってことに、重ね合わせているわけじゃん? そこはすごく蓮沼くんらしいなって思ったんだよね。そういう話はやっぱり聞きたい。結局タイトルに『アントロポセン』を選ぶことにしたのには、どういう過程があってのことだったのか。
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蓮沼:
昨日たまたま、国立近代美術館へ行って、ゴードン・マッタ=クラーク展を観てきました。都市の死骸が、展示空間を独特の雰囲気で覆っていました。
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佐々木:
うん。
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蓮沼:
亀裂や切断という、ある意味で「否定」をしていく……、都市の否定が作品になっているみたいな。資本主義的なものの否定ですよね。
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佐々木:
そうですね。輪切りにしていますからね。
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蓮沼:
人間が作り上げたものたちを切って、壊して。例えば、壁にガーンと穴を開けて、太陽光を入れるとか。
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佐々木:
めっちゃ壊したりもしますからね。
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蓮沼:
都市環境のサイクルから排除されてしまう物事が、丁寧にあぶり出されていました。排除されてしまうものっていうのは、無駄な物事ですよね。例えば、赤瀬川原平さんの「超芸術トマソン」も都市環境における無駄なものかもしれません。これに近しいように、都市生活を送っている日常にある異物や排除されることを体現していく。
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佐々木:
うんうんうんうん。
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蓮沼:
この通常だったら非効率過ぎて排除されてしまう行為を、無理をしてでもつくり出していく。この感覚は蓮沼フィルの活動に似ていると感じていました。インフラも整っている日常生活の中での違和感の発見というか。そういった違和感をすくいとっていく。そういう視点で捉えると、蓮沼フィルの活動は規格外なアプローチだと思っています。通常の感覚では不可能だと思えることや資本的に潤うプロジェクトでもないですし。自力で作り出す集団のプロジェクトを動かしていくこと自体がパフォーマティヴな作品でもあるし、僕にとってはこの蓮沼フィルというプロジェクトをやるっていうこと自体が、新しい音楽を作っていることなんです。
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佐々木:
実際しんどい作業だろうしね……。しんどいっていうか面倒くさい作業を、もちろんいっぱい含んでるよね。
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蓮沼:
もちろんそうですし、昔は面倒くさいなあと思うこともありましたけど、いまは慣れもあると思いますけれど、とてもポジティヴです。
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佐々木:
あはは(笑)。
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蓮沼:
話がそれるんですが、蓮沼フィルのメンバーと一緒に活動をすることは、自分にとって素晴らしい出来事だったんだなって思ったんですよね。
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佐々木:
うん。
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蓮沼:
「時が奏でる」から数年経って、メンバーの変化に気づいて、新たな創作意欲が生まれたことだったり、音楽を通して「人間」ということを深く考えるようになったり。
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佐々木:
うん。
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蓮沼:
資本主義的なものの否定だったり、非効率を排除せずに肯定して新しいものを作り上げていくこと、こういったことの根底にはアントロポセンという言葉の意味が持つ問題性につながっていくだろうな、と思っているんです。いち音楽家の小さな活動と、世界レベルの大きな問題と向き合っていくということに対して。
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佐々木:
ああ。
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蓮沼:
例えばこう、資生堂ギャラリーでの展覧会のコンセプトが生まれた理由というものも、過去に蓮沼フィルの活動があって、それの延長で生まれたコンセプトでもあります。
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佐々木:
なるほどね、うんうん。
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蓮沼:
だからこう、どれをとっても、こう……。
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佐々木:
ちゃんとあって、無駄なことはなかった。
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蓮沼:
なかった。無駄だろうなあ、と思ってやっていたことも、全く無駄ではなくて、今の自分を形成している大切なことだったと気づきました。
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佐々木:
うんうんうん。
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蓮沼:
そうなって、いろいろ考えていくと、結局ロゴス中心な感じに、これだけ合理的に都市が回っていると、無駄なこともいいんじゃないかなっていう。
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佐々木:
うーん。無駄とか無理があるっていうのも無理というか。何だろう。「無理してでもやれ」っていうことじゃなくて、むしろこう、無理的なことや無駄的なことっていうのをどんどん減らしていけば、いいことになるよっていう。どんどん減らしていけば、いいことになるよっていうことに対するアンチテーゼだよね。
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蓮沼:
はい、そうです。
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佐々木:
いや、そういうことじゃないんだっていう、もっとなんか余剰があるというか、コントロール、アンコントローラブルなことっていうのが、それをあえて招き入れるみたいな、ジョン・ケージみたいなこともなく……。
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蓮沼:
そうですね。
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佐々木:
なんか、ごく自然にそうなんだという。というか、そもそも現実世界ってそうですよねという話だよね。
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蓮沼:
その通りです。仮想現実を作りたいのではなく、脱近代を実践としてやっているわけでもなくて。自分でできることから行動していく。まあ、そういうことです。
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佐々木:
うん、そうだと思う。
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蓮沼:
大変でもあるし気合いも必要なんだけど、いっちょやってみるか! みたいな事というか。僕だけじゃなくて、みんな各々にそういうことはあるんだと思います。
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佐々木:
例えば、全く同じこのメンバーでこの中の誰かが作った曲でこれをやったら、このメンバーでやったら違う答えがでてきたりするかもね。
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蓮沼:
あ、そうそうそうそう。
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佐々木:
だからそういうようなことだよね。うん。それを今回、自分のことでまずやって、出してやったのがこれです。
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蓮沼:
そうですね。
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佐々木:
なるほどね。「作曲:ニューフィル」(http://www.shutahasunuma.com/performance/2697/)のコンサートの時に、自分が書いたテキストでも、大友良英さんのモデルと蓮沼くんのモデルの話というのを書いたと思うのね(http://bit.ly/2KAzoSl)。これはもちろん音楽の話でもあるというか、音楽の話なので、もちろん音楽的な話ではあるんだけども、いつもフィルをやっている蓮沼くんに関しては、要するに共同体のモデルをどういうふうに考えるかの部分が新しいというか、それ以前とは違う共同体のモデルがどういうふうにあり得るのかという模索の問題の答え方に受け取る部分があるんだよね。それが確実にある時期、大友さんもやっていたことだと思うわけ。
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蓮沼:
うん。
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佐々木:
つまりだから、音楽的な問題と別と言ったけど、実はこれ、音楽的な問題なんだよね。つまりアンサンブルという問題なわけ。アンサンブルとかオーケストラというのは一体何なのかという問題だよね。で、それに対する模索というのがやっぱり、蓮沼くんはこう、結果としてやっていて、『時が奏でる」でやったことを、今回4年半ぶりに、今度は、違う答えを出そうとしてやっているって感じがしましたけどね。
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蓮沼:
そうですね。音楽性の話でもあると思うんですよね。時間が経つと、考え方も成長していきますね。
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佐々木:
そうだよね。年も食っていくもんね。もちろんいろんなこと、学びもあるだろうし、反省もあるだろうし、発見もあるだろうから、それはそうですよね。
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佐々木:
これって、だからそうやって録っていってさ、一枚のアルバムになって、世に出るわけじゃないですか。
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蓮沼:
はい。
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佐々木:
で、こう今までの話を踏まえて、今度は要するにレコーディングとかいろんな過程みたいなことの、コミュケーション的なレベルのいろんなこともあった上で、でも最終的に一枚の一つながりの、数曲からなる作品として世に出るわけじゃない?
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蓮沼:
はい。
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佐々木:
で、この『アントロポセン』を、蓮沼執太フィルのセカンドアルバム、蓮沼くんのニューアルバムとして世に問うにあたって、一つの作品みたいなことでまとめるにあたって、何か考えたことってありますか?
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蓮沼:
アルバムとしてのってことですか?
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佐々木:
そうそうそう。それはいろんなレベルの話があるって思うんだけども。その……、まあ、マスタリングも結構気合い入れてやったっていうのも明らかだし。
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蓮沼:
気合い入れましたね。
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佐々木:
だからそこは、要するにそこは最後なわけじゃない? 一つの、まとめとしての。もちろんこの後、コンサートとかあるんでしょうけど。それは何かこう、一つの作品として、つまり、これは僕らが今語っているようなこととは全く別に、一枚のCD、一つのアルバムとしてこう、そういうコンテクストとは全く無関係に聴かれていく可能性もあるわけわけだよね。そこの部分への配慮って、もちろん音楽家だからあるわけで。どういう感じの感覚なんだろうか、今。
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蓮沼:
いろんな答え方ができるかもしれないんですけど、フィルとはいえ、自分の最新アルバムとしても作っています。
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佐々木:
うん。
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蓮沼:
やってきたことの、過去の積み重ねがあっての現在。
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佐々木:
「今ここです」ってこと?
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蓮沼:
そうです。僕の現在地が『アントロポセン』です。妥協せずに信頼できる仲間と音楽を作り上げてきました。単純に、僕が好きな音像になっています。まあマスタリングをお願いしたJoe Lambertさんの仕事も素晴らしかったですし、マスタリングに持っていくための前のミックスや録音も、葛西(敏彦)さんと緻密に会話をしながら行っていきました。佐々木:
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佐々木:
そうか。でもやっぱりこう、なんだろう……、一個一個別々にあって、それがいくつも同時に走っているということと、でも「今ここです、これなんです」の、両方があるもんね。
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蓮沼:
そうですね。
Session 4 へ続きます。